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税金裁判の動向【今月のポイント】第247回 債務免除益に対する課税と弁護士費用の控除

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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銀行からの借入金について、和解に基づき、一定金額を支払うことで残債務が免除された場合、債務免除益は所得を構成することになります。ただし、その免除が資力の喪失を原因とするものであれば、 所得税法44条の2 が適用され、課税されないこととされています。その認定はどのように行われるのでしょうか。

また、和解によって生じた債務免除益が一時所得に当たる場合、それに至るまでの訴訟活動に係る弁護士費用等の控除は認められるのでしょうか。

今回は、これらの点が争われた事案をみていきましょう。

事案の概要

(1)銀行からの借入れをめぐる経緯

原告X1は亡Aの子であり、原告X2は亡Aの妻です(以下、2人を併せて「Xら」といいます...