会計専門職大学院理事長・杉本徳栄教授にきく 会計専門職を巡る状況と会計大学院の役割

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公認会計士試験受験者の減少がとまらない。原因とされた待機合格者問題は影を潜めたものの,受験者増への道は見えていない。この問題を重視する会計大学院協会と日本公認会計士協会(JICPA)は6月,共同で「会計専門職人材調査に関する報告書」を公表した。公認会計士など会計専門職をとりまく状況はどうなっているのか,会計大学院で何が起きているのか。今年5月に会計大学院協会理事長に就任した杉本徳栄・関西学院大学大学院教授に話をきいた。

本誌:会計大学院協会は,6月25日に「会計専門職人材調査に関する報告書」をJICPAと共同で公表しました。公表に至った経緯などをお聞かせください。

杉本理事長 :まず,本日お話するなかでの意見部分は,会計大学院協会の公式見解ではなく,あくまでも個人的見解であることをご理解ください。

共同調査のきっかけは,森公高・JICPA会長による高田敏文理事長(当時)宛ての書簡です。昨年7月24日付のものですが,その内容は,公認会計士(CPA)を目指す人材の減少について,関係者と協力しながら包括的な調査を行いたいというものでした。その一環として,会計人材の教育を担う会計大学院協会に共同調査を呼びかけたものと理解しています。

書簡には調査の目的が2つ記されていました。一つは,今後予想されるCPA資格(試験)制度の改正の議論に有益な基礎情報を提供すること。もう一つが,会計専門職志願者の質・量の充実や会計専門職教育のために両協会が取り組むべき課題・実施すべき施策の立案に有益な情報を提供することです。

JICPAでは会計士試験の志願者減少を深刻な問題としてとらえていましたが,これは会計大学院や会計大学院協会も真摯に受け止めなければならない問題であり,両協会の考えは同じです。そこで昨年7月末に開催された会計大学院協会の会議でこの件がとりあげられ,JICPAとの共同調査が了承され,スタートしました。

本誌:具体的な調査対象と目的は何ですか。

杉本理事長:会計大学院は,平成15年の公認会計士法の改正によって見直された試験制度にも結び付き,会計の専門的人材育成の教育課程として展開してきました。ところが現状をみると,共同調査の報告書のデータからも明らかですが,7年前の平成20年度の試験合格者の未就職問題(いわゆる「待機合格者」問題)の発生をきっかけに,平成23年度から試験志願者(受験者)の減少がは...