ハーフタイム ビジネスと会計に活かせる「謙虚な懐疑主義」

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ビジネスでも会計でも確実な知識や将来予測は必要であるが,確実性については人によって3つの異なる態度がみられる。①自分たちの知識・予測に自信をもち確実とみるもの,②どんなに努力しても確実なものは見つからないと諦めるもの,③常識的判断は別として,揺れる判断は一旦保留し,引続き確実性を探求する「謙虚な懐疑主義」の3つである。

モンテーニュは,タイプ①について次のように毒づいている。「思い上がりは人間の生まれつきの病気である。同時にもっとも傲慢なのも人間である。このみじめで,ちっぽけな被造物が,自分自身を支配できないばかりか,あらゆる事物の攻勢にさらされているくせに,この世の収支決算の帳簿をつけることができるという。そのような特権は誰から授かったのだろうか。そんな立派な偉い役目の信任状があるなら見せてもらいたいものである」(『エセー』第2巻)。タイプ②は手も足も出さないから,いずれビジネスマン失格だろう。

「本当に知識のある人は,麦の穂と同じで,麦の穂が空っぽのうちは頭を昂然と立てているが,次第に熟して麦粒が実ってくると,身をかがめ,穂を垂れはじめる」。これがモンテーニュのいう「謙虚な懐疑主義」の...