シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第5回 収益認識

慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生

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木村太一君 今日は何を話題にしましょう?

教授 資産負債アプローチから純利益まで一巡したところで,個別論点で最も利益との関係が密接なものを扱うとすると,収益認識ですね。

木村君 第2回の「公正価値測定vs.取得原価測定」のところで棚卸資産と履行義務の測定について触れましたね。

履行義務と収益認識

教授 IFRS第15号は,簡単に言うと(約束した財またはサービスの支配を顧客に移転するという)履行義務の充足を以て収益を認識し,その認識時に契約に基づく取引価格を以て測定するという内容です。

木村君 フローを捉える実現稼得過程アプローチと変わらない結果となり,日本では,変わらないなら伝統的な実現稼得で説明すればいいという見方もあるようですが。

教授履行義務の消滅という概念的な整理は意味があると思います。契約の締結によって潜在的な資産といえる契約資産(対価請求権)と潜在的な負債といえる契約負債(履行義務)が生じます。両者は等価で未履行の段階では会計処理されませんが,観念的には存在するものとします。履行が充足されたとき,会計仕訳の左側で潜在的な請求権が顕在化(売掛金が発生)し,右側で履行義務の消滅により収益が認識されま...