金融庁「会計監査の在り方に関する懇談会」提言から読み取るべき課題

青山学院大学大学院 教授 八田 進二

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1.「会計監査の在り方に関する懇談会」の設置の趣旨

資本市場の信頼性を確保し,より向上させるためのインフラとして,会計および監査制度が信頼し得るものでなければならないことは周知のとおりである。しかし,わが国の場合,21世紀に入ってからも,公開会社における会計不正は止むことがなく,それどころか,歴史ある著名な企業においても,会計不正が露呈することから,市場の信頼が大きく失墜してきているものと思われる。そのため,規制当局としても等閑視することはできない深刻な状況にあるとの認識から,下記の趣旨の下,「会計監査の在り方に関する懇談会」(以下,「懇談会」という。)を設置したのである

会計監査については,これまで,その充実に向けて累次の取組みが行われてきたところである。しかしながら,近年のIPO(株式新規公開)を巡る会計上の問題や会計不正事案などを契機として,改めて会計監査の信頼性が問われている状況にある。
このため,今後の会計監査の在り方について,経済界,学者,会計士,アナリストなど関係各界の有識者から提言を得ることを目的として,「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置したのである。

ところで,ここ...