IFRSをめぐる動向 第90回 解釈指針案「法人所得税務処理に関する不確実性」とコメントレターの概要
PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子
1.はじめに
本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,2015年10月にIASBのIFRS解釈指針委員会(以下,IFRIC)が公表した解釈指針案「法人所得税務処理に関する不確実性」の概要と,2016年7月のIFRICの会議で議論された本解釈指針案に対するフィードバックについて取り上げます。
IFRICは,税法が企業に即時に係争金額の支払を求める場合に,企業はどのようなときに当該係争金額の還付見込額について当期税金資産を認識することが適当であるかという質問を受けました。企業は,税務調査により追徴額が求められる場合,その追徴額に対して,しばしば異議を申し立てることがあります。その場合,企業は,追徴額の一部もしくは全額について還付されると見込むことになりますが,この質問は,そのような場合において,企業は当期税金資産を認識することができるかを確認することが趣旨であったと考えられます。この質問について,IFRICは,アウトリーチを実施した結果,実務において,税務当局が特定の税務処理を税法に...
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