[全文公開] わたしの働き方Vol.1 ~独立公認会計士インタビュー~

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小駒望公認会計士事務所 代表 小駒 望

公認会計士にも様々な進路がある。監査法人はもちろん,組織内会計士や独立開業など,専門性を活かし,広い分野で活躍している。本コーナーでは,独立して個人で仕事をしている公認会計士から,これまでのキャリアや現在の仕事,ワークライフバランスなどを聞く。

1 「武器になる」資格の取得

─小駒さんが会計士を目指したきっかけを教えてください。

会計士という仕事を,もともと知っていたわけではないんです。私は大学への入学が現役で入るより4年遅かったのですが,4年遅れで就職活動をすることは,ディスアドバンテージだと思っていました。その中で社会に出る上での武器になるものを備えておいたほうがいいと考えて資格を目指しました。最初は簿記から始め,1級に合格した後,学生で時間もあったので公認会計士を目指そうと思いました。

─これまでのキャリアと,現在のお仕事について教えていただけますか。

会計士の試験を通ってから監査法人に勤務して,国内法人の監査をしていました。2年ほどで転職し,ファンドの運営の会社に移りました。主に投資先の検討と,バリュエーションという事業価値算定を中心にやっていました。

現在の仕事は,ほとんどが税務の仕事で,法人の顧問と決算などです。国際税務の仕事も入ってきていて,私としても今後力を入れていきたいなと思っているところです。

2 仕事と「うまく付き合う」ように

─小駒さんは独立されていて,お子さんもいらっしゃいます。働き方というものについてどのようなお考えをお持ちでしょうか。

監査法人やファンド運営の会社にいる時は,残業は日付を超えてやることもありましたし,それで良しとしていました。けれども,結婚して子どもができてから(働き方について)真面目に向き合って考えるようになりました。やはり仕事も人生におけるひとつの構成要素であって,それが主であるべきではなく,うまく付き合っていきたいと思うようになったんです。今は5時半ぐらいには退勤しています。

─事務所の皆さんもですか。

皆さんそうです。残業はほとんどないんですよ。もし恒常的に残業が出るのなら,それは何か問題点があるはずだから,そこを洗い出して解決するようにします。事務所のスタッフは女性しかいないのですが,フルタイムで働くのは難しいという方も,時間短縮や勤務日数を減らすなど,その方の状況に応じて柔軟に対応しています。

─独立のメリットはどんな点ですか。

最大のメリットは,時間が自由になるところです。責任を全て自分が負うことになりますが,それに対するやりがいもその分ついてきます。

今,自分で独立して,直接お客様とのやりとりをして,この業務は明確にお客様のためになるということがわかります。感謝の言葉を直接いただけるので,自分のやったことが役に立っているなというのを実感でき,やりがいを感じます。

─現在はスタッフを9人も抱えるまでになりましたが,職場の環境作りで意識していることはありますか。

会計事務所はサービス業だと,私は考えています。サービス業においては「人財」がとても大切です。できるだけいい人に事務所のメンバーに加わってもらいたい,そのためには事務所としての売りが必要だと考え,「働きやすさ」の整備に注力するようになりました。 まず,勤務日数・時間を柔軟に設定しました。また,最低でも年2回はスタッフと2人で話す機会を設けて,個人の要望を詳しく聞くことにしています。小さな不満も時間が経つと育っていくので,大きくなる前に対処することができます。

3 女性は会計士に向いている!

─日本公認会計士協会の東京会で「後進育成部」に所属されていますが,どのような活動をされていますか。

後進育成部は,若手の会計士や準会員、受験者等に対しての情報提供や活動支援などに注力しています。青年部及び準会員会に対して,活動の承認や管理監督をするなど,東京会の本部との繋ぎ役となっています。

─若手の会計士や会計士を目指している人たちに,自分の進む道を決める上でのアドバイスをお願いします。

私としては,自分の人生形成において資格を取ってとても良かったと思っています。資格がなければできない業務や,(普通なら)関与できない人たちと話をする機会があります。身の回りにいる先輩方の話を聞いて,有効に活用して欲しいです。

─女性にとって会計士の仕事はどのようなものでしょうか。

会計士は,一度社会から離れても復帰しやすいので女性に向いている資格だと感じます。また,業務において必要なタイミングで必要なケアをするなど,お客様の面倒を見なければいけない場面があると思いますが,細やかな気配りやケアを継続的にしていくことは,(女性に)向いている気がします。どちらかというと持久力が必要な場面も多いと思うので,そういう部分についても向いているのではないかと思います。

小駒 望(こごま・のぞみ)氏

小駒望公認会計士事務所代表
大手監査法人,投資ファンド運営会社勤務を経て,2010年11月に独立。日本公認会計士協会東京会の後進育成部,東京税理士会の国際部委員などを務める。趣味はランニングで,週1回は皇居を走る。1歳半の子どもを抱っこしながらのスクワットも欠かさない。