「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く 有限責任 あずさ監査法人

  品質管理の責任者:金井 沢治(専務理事/パートナー)
  監査実施の責任者:服部 將一(常務執行理事/企画本部長/パートナー)
  聴き手:町田 祥弘(青山学院大学大学院教授)

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1.コード公表後の取り組み

町田  「監査法人のガバナンス・コード」(以下,コード)の公表後,現在,あずさ監査法人(以下,あずさ)ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

金井  まず,7月から組織的運営をより実効的に実施するための新ガバナンス体制に移行しています。最も重要な点は,経営と監督・評価を大きく分離したことで,2つの機関を新設しています。1つは監督・評価に関する機関である「経営監視委員会」。これは経営に携わらないパートナーが経営の監視と品質向上のための取り組みについて,その実効性を評価する機関となります。

それから独立性を有する第三者による監視機関として「公益監視委員会」を新設しました。法人の重要な活動及び事案について,経営監視委員会から報告を受けるとともに,理事長または専務理事との協議を実施しています。公益監視委員会は,外部委員4名(浦野光人氏,石田浩二氏,福川伸次氏,阪田雅裕氏)と,内部委員2名で構成しています。

ただ,監査品質の向上に関しましては以前から取り組んできていまして,必ずしもコードが出たことをきっかけに何かを始めたというわけではありません。たとえば公益監視委員会についても,私たちは1年前から,経営監理委員会という機関を設置して,同様の目的の達成を目指してきています。

町田  従前からの経営監理委員会と,新設された公益監視委員会の違いは何ですか。

金井  実質的には同じです。メンバーも,外部委員4名は同じですが,組織を再編しましたので,その位置づけが,「公益」の観点からのモニタリングということで明確になりました。

町田  公益監視委員会における外部委員の,選任基準や方針,プロセスなどはどのようになっているのでしょう。

金井  最終的には外部の方の知見を経営に生かすという目的がありますので,企業経営を長く経験された方,金融機関出身で公的機関の委員を務められた方,官庁等の出身者,法律の専門家と,幅広いご経験の方を選任しております。プロセスは,我々の人的ネットワークを通して,法人として候補の方を広く集め,その中で独立性の要件等を勘案しながら選任するという流れです。

その中で,独立性に関しては被監査会社での勤務経験等がある方を選任することも含めて,他の公益監視委員会の委員の方にも意見を伺いながら慎重に検討しました。

選任にあたっては,その方のご経験や,我々の法人運営について...