「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く P w Cあらた有限責任監査法人
品質管理の責任者:井野 貴章(執行役常務)
監査実施の責任者:木内 仁志(執行役副代表)
聴き手:町田 祥弘(青山学院大学大学院教授)
1.コード公表後の取り組み
町田 監査法人のガバナンス・コード(以下,コード)が公表されましたが,現在,PwCあらた有限責任監査法人(以下,PwCあらた)ではいかなる取り組みをされているのでしょうか。
井野 コードの公表前と公表後にわけてご説明しますと,公表前からの取り組みとしては大きく3つあります。「監査品質に関する報告書」の公表,「公益監督委員会」の設置,「人財会議」の設置,です。透明性をもって対外的なコミュニケーションをするという観点から「監査品質に関する報告書」を2015年12月に公表し,アナリストや監査役,PwCグローバルからのフィードバックを反映した2016年版も2016年10月に公表しています。
次に,第三者である外部の方の知見の活用という観点で,2016年8月に「公益監督委員会」というものを設置し,経営のプロや,資本市場に造詣の深い方々をお招きしております。
三番目の「人財会議」は,人材への投資という観点から,2016年7月1日から始まる事業年度から設置しております。これは毎月,監査法人の事業部の部長クラスや,人の配置・評価・業務配分等に対する権限を有する者を集めて「人」に関する論点だけを議論する会議です。また,コードでは資本市場との対話も重要とされていますが,この点についても,従来からアナリスト等と会議をする場を設けており,現在はこれをより強化していく方向で進めております。
町田 コードの公表後についてはいかがでしょうか。
井野 コード公表後については,現在,自分たちの取組みを評価する仕組みを入れることを検討しているところです。また,従来からの取り組みをよりコードに合わせていくこと,対外的な情報発信の強化を進めています。
何より,コードの公表を受けて,財務諸表利用者のために監査をするのだという組織的な意識づけが強まったと思います。たとえば,品質管理部門に監査上の判断に関する問合せがあったときに,技術論だけでなく,投資家が会社をどう見ているか,この情報が持つ意味は何かの議論も大切です。情報の利用者は誰かということは従来よりも強く意識されるようになりました。誰の目線を重視して結論を導くかは結論の出し方に影響を及ぼすので,このような意識・取り組みの変化は大きいと思います。
2.透明性報告書の作成プロセス等
町田 PwCあらたでは「監査品質に関する報告書」,いわゆるコードで...
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