監査報告書の「透明化」に向けて 第4回 監査人の観点から

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 千代田 義央

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国際監査基準(ISA)の改正に伴い,ISAに基づき財務諸表の監査を行う会計監査人は,2016年12月15日以降に終了する会計年度からISA701に基づく監査報告書(以下,便宜的に「長文化した監査報告書」とする。)を提出することが求められている。これは,香港証券取引所に上場し,監査においてISAの適用を受ける日本企業に対しても同様に要求される。本稿では会計監査人の立場から,長文化した監査報告書の作成実務における課題や対応を整理した。

1.香港証券取引所に上場する日本企業における長文化した監査報告書への対応

株式会社ダイナムジャパンホールディングス(以下「ダイナム」)は,日本国内でパチンコホール運営事業を行う日本に本社を有する企業であり,2012年に香港証券取引所に上場し,その後,年次及び半期での継続開示を行っている。PwCあらた有限責任監査法人(以下「PwCあらた」)はダイナムの監査を受嘱しており,2017年3月期の年次報告書における独立監査人の監査報告書(2017年5月25日付)において,重要な監査事項(Key Audit Matters 以下「KAM」)を含む監査意見を表明した。

ダイナム...