収益認識基準公開草案の検討 財務諸表作成者の問題意識と実務対応 File01 日本建設業連合会

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企業会計基準委員会(ASBJ)が「設立以来,最も大きな影響をもつ」としている企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等が7月20日に公表された。損益計算書のトップライン(売上高)を決める重要基準になるため,ASBJは開発に先がけて広く意見を募集,これに対して昨年5月,計33の団体・個人が意見書を提出している。それらを踏まえて開発された公開草案の内容を財務諸表の作成者である企業はどう受け止めたのか。このシリーズでは意見を提出した業界団体を中心に財務諸表作成者側の話をきく。

1.公開草案について

――ASBJが昨年5月に実施した意見募集の際に日本建設業連合会(日建連)は意見書を提出しました。その内容を踏まえて今回の草案についての全体的な評価をお聞かせください。

大林組・経理部長・高田佳明氏(以下,高田氏): 昨年の意見募集では日建連としてASBJにいろいろなコメントを差し上げました。その後,ASBJのアウトリーチでお話をさせていただく機会があり,私たちがお願いしていた件はかなりの部分を拾っていただき草案にうまく落とし込んでいただけたというのが正直な感想です。

鹿島建設・財務本部主計部担当部長・三上幸彦氏(以下,三上氏): 代替的な取扱いが設けられたことで,100%ではないにしても,現状の日本基準を踏襲した処理が認められるとの整理がある程度明確になされたと理解しています。かなりの部分で実務的な負担が軽減されるとみています。

前田建設工業・経営管理本部財務部監理グループ長・高橋潤氏(以下,高橋氏): 一番気になっていたのは,重要性の考え方を落とし込んでいただけるかどうかでした。当初は重要性の取扱いが基本的にはないと聞いていたので,今回の代替的な取扱いをみて,これであれば建設業界も妥協できる内容であると思っています。

――草案について,関係者の間では規定(の文章)自体が日本語に馴染まない表現であり読みづらい,あるいは理解しづらいのではないかといった心配があるようです。代替的な取扱いの規定も含め,草案は企業の実務家にとって理解しやすいものになっていますか。

三上氏:元が英文(IFRS15号)ですから,言い回し自体はどうしても奇異な感じがしますね。ただし,日本語として読みやすい表現に改めた場合,そもそも国際的な整合性を図るという観点からスタートしているのに,IFRS15号と異な...