世界のIFRS適用事例 Case10 減損損失の戻入れ

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我が国の「減損会計に係る会計基準」では,固定資産等について一度計上した減損損失を戻入れることは認められていません。

一方,IAS第36号「資産の減損」では,のれん以外の資産について認識した減損損失は,最後の減損損失を認識した以後に当該資産の回収可能価額の算定に用いた見積りに変更があった場合にのみ,戻入れをしなければならないとされています(第114項)。すなわち,企業は,各報告期間の末日において,過去の期間にのれん以外の資産について認識した減損損失がもはや存在しないか又は減少している可能性を示す兆候があるかどうかを検討しなければならず,そのような兆候が存在する場合には,当該資産の回収可能価額を見積らなければなりません(第110項)。

それでは,「過去の期間に認識した減損損失がもはや存在しないか,または減少している可能性を示す兆候」とは,具体的にはどのような事象が該当するのでしょうか。

減損損失を戻し入れた理由は様々

デンマークの飲料会社であるカールスバーグ社は,2017年12月期のアニュアル・レポートで次のような開示をしています。

過年度に減損処理した2つの醸造所は,中国における「大都市戦略」の取...