事例から学ぶ適時開示 第3回 発生事実に係る不適正な開示の事例・留意事項
東京証券取引所 上場部 開示業務室 ディスクロージャー企画グループ 調査役 藤澤 明子
はじめに
第2回( No.3359 )では,株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)の適時開示のうち,決定事実について,不適正な開示が生じやすい開示項目を中心に,具体的な事例を紹介した。第3回となる今回は,発生事実について,不適正な開示が生じやすい開示項目を中心に,具体的な事例を紹介しつつ,留意点を述べることとする。
なお,本稿において意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり,所属企業の見解ではないことをあらかじめお断りする。
1.発生事実に係る不適正な開示の現状
適時開示が求められる「発生事実」とは,上場有価証券の発行者(以下「上場会社等」という。)の意思決定によらずに生ずる情報のうち,投資者の投資判断に重要な影響を与えるものをいう。上場会社等に対しては事実の発生を「認識した」時点で直ちにその内容を適時開示することが義務付けられており,不適正な開示の防止には,情報を迅速かつできる限り正確に把握するための体制の整備が欠かせない。
東証の有価証券上場規程が,発生事実として開示を求めている項目は,「災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害」①,「主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動」②...
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