金融商品会計基準の改正について(中)一般事業会社の適用上の課題

有限責任あずさ監査法人 金融AAS室 米国公認会計士 中川 祐美

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1.はじめに

本稿では,金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集(以下,「意見募集文書」)にあたって企業会計基準委員会(以下,「ASBJ」)が予備的に識別した適用上の課題を取り上げ,一般事業会社における適用上の課題と財務上の影響について解説する。

文中の意見に係る部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.適用上の課題と財務上の影響

ASBJは,わが国の会計基準を高品質なものとするために,金融危機時以降に改正された国際的な会計基準との整合性を図ることが国内外の企業間の財務諸表の比較可能性を向上させるものと考えている。一方,整合性を図る場合には,金融商品会計基準の20年ぶりの抜本的な改正となるため,多くの適用上の課題が生じることを想定している。

【図表1】予備的に識別された主な適用上の課題

分類及び測定ヘッジ会計減損・ 株式投資のOCIオプション選択時のノンリサイクリング・ 組込デリバティブの区分処理・ 非上場株式の公正価値測定・ 実効金利法の適用・ 金融商品組成等により受け取る手数料の取扱い・ 初日損益の取扱い・ 外貨建債券における為替換算差額の取扱い・ デリバティブを時価評...