企業内容開示制度の実効性確保に向けて 第5回 法定開示書類とその他自主開示書類の関係整理について

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 黒崎進之介

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1.はじめに

本企画では,企業内容開示制度の実効性確保に向けた課題や今後の取り組みの方向性について,全8回にわたって解説することとしている。

我が国においては金融商品取引法に基づく有価証券報告書と会社法に基づく事業報告等(事業報告・計算書類)が存在している。一方で,統合報告書やCSR報告書等のように,企業が自主的に各ガイドライン等に従い,開示している開示書類が存在している。昨今においては記述情報(非財務情報)の重要性の高まりにより,2018年に企業内容の開示に関する内閣府令(以下,開示府令)が改正され,2020年3月期の有価証券報告書から開示情報が充実されることとなった。これにより,有価証券報告書と自主開示書類の間で重複が発生することが想定され,また両者の位置づけは極めて不明瞭な状況となっている。また,法定開示書類においては事業報告等と有価証券報告書の開示が法定で義務付けられているものの開示内容が重複しており,情報開示の不効率性や監査対象の重複があるとする意見がある。本稿においては,現在の法定及び自主開示書類の状況及び課題を整理するとともに,今後の開示の在り方の示唆について述べることとする...