これでわかった!「会計上の見積りの開示」 第4回(最終回) 監査上の主要な検討事項(KAM)との関連

 公認会計士 山田 善隆

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1.はじめに

本連載では,企業が企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」(以下,「見積り開示基準」という)の趣旨に即した対応を行うためのヒントとなるように,多面的な視点からの解説を試みている。

今回は,主に上場企業等を対象に,会計上の見積りの開示と同時期に適用開始となる監査報告書の「監査上の主要な検討事項」(以下,「KAM」という)の記載との関連性,加えて会計上の見積り項目がKAMとして選定された場合の対応のポイントについて検討する。

なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

2.会計上の見積りと監査上の主要な検討事項(KAM)との関連性

まず,会計上の見積り項目とKAMとの関連性について整理しておきたい。以下では,KAMに関する監査実務指針である監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」(以下,「監基報701」という)のなかの会計上の見積りに関連する要求事項等を確認していく。

(1)KAMの決定

KAMを選定するにあたって,監査人はまず「監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から,監査を実施...