会計知識録 第12回 役員報酬開示制度の趣旨と最近の傾向

 公認会計士 溝口 聖規

( 40頁)

最近の株式会社の役員報酬について,報酬額1億円以上の取締役数の増加,株式報酬や業績連動報酬などの支給方法の多様化といった傾向が見られます。また,プロ経営者と呼ばれる経営者も増加しており,役員報酬は有能な経営者を迎えるための重要な施策の1つとも考えられています。このように,会社の経営ガバナンスにおいて,会社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上のためのインセンティブとして,役員報酬をどのように設計しモニタリングするかは非常に重要な課題と言えます。

今回は,役員報酬の法規制,開示制度,会計処理について解説します。

会社法上の取扱い

役員報酬は,「報酬,賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益」( 会社法361条 )とされています。役員報酬には,株式報酬などの金銭以外の報酬も含まれます。以前は,役員報酬と役員賞与は区分されていましたが,2006年の会社法の改正により,現在では役員賞与も役員報酬の一部とされています。

役員報酬は,定款あるいは株主総会で決議する必要があります。役員(取締役)が自分で自分の報酬を決定できると,いわゆる「お手盛り」が発生して会社の利益を損なうおそれがある...