企業に求められる「記述情報の開示の充実」とは 第4回(最終回) 2021年3月期以後の開示を検討するうえでのヒント

有限責任 あずさ監査法人 公認会計士 関口 智和

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1.はじめに

2020年3月期より,有価証券報告書における記述情報の開示の充実に向けた実務での取組みが本格化している。

筆者が所属する有限責任 あずさ監査法人/KPMGジャパンでは,2020年11月頃から日経225の構成銘柄に選定されている企業(225社)が公表した直近年度(主に,2020年3月期)における有価証券報告書と統合報告書のすべてをレビューし,開示情報の分析や比較を行った(以下,これを「KPMGの調査」という。)。KPMGの調査結果を踏まえると,直近年度において,多くの企業の有価証券報告書で記述情報の開示の拡充が図られていたものの,当初企図されていた制度趣旨を踏まえると,更なる改善が期待されると考えられた事例も少なくなかった。

また,2020年11月に,金融庁から2020年3月期以後の有価証券報告書や統合報告書の開示を踏まえ,「新型コロナウイルス感染症」と「ESG」に関する開示に関する好事例をまとめた「記述情報の開示の好事例集2020」が公表されている。続けて,2021年2月には,「記述情報の開示の好事例集2020」に,「経営方針,経営環境及び対処すべき課題等」,「事業等のリスク」...