会計知識録 第14回 フードロスは特別損失?

~棚卸資産から生じる損失の会計処理

 公認会計士 溝口 聖規

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フードロスが社会問題化しています。フードロスは「食べることができるにもかかわらず廃棄される食品」のことを指し,消費者庁によれば,2017年には600万トンを超える規模とも言われています。これは国民1人あたりに換算すると,毎日茶碗1杯分の食べ物が捨てられている状況とのことです。フードロスは,食料自給率が低い我が国が自らさらに引き下げている点や,廃棄された食品を焼却する際に発生する二酸化炭素やダイオキシンなどによる環境汚染などが問題視されています。それと同時に,フードロスは,会社の損益にも大きな影響を及ぼします。今回は,フードロスをはじめ,食品以外も含めた棚卸資産全般から発生するロスの会計処理について説明します。

廃棄ロスと会計処理

棚卸資産は,取得時には購入した金額(取得価額)で貸借対照表(B/S)に計上されます。しかし,決算期末時点で「時価」が取得価額よりも下落している場合は,B/Sに計上する金額(簿価)を時価まで切り下げる必要があります(簿価切り下げ)。例えば,市況の悪化,代替品の発売,物質的な品質劣化等を原因として,取得価額100の商品の時価が60まで下落した場合,B/Sの商品の金額は...