IASBディスカッション・ペーパー「企業結合‐開示,のれん及び減損」に提出されたコメントの動向の分析(中)
同志社大学 商学部・商学研究科 客員教授,元パナソニック株式会社 理事 山田 浩史
1.はじめに
今回は,国際会計基準審議会(IASB)が2020年3月19日に公表したディスカッション・ペーパー「企業結合‐開示,のれん及び減損」(以下「本DP」)に提出されたコメント分析(個人と大学生を除く147件が対象)の2回目であるが, 減損テストの有効性(質問6) , 減損テストの簡素化(質問9~11) , 無形資産(質問12) , 米国会計基準とのコンバージェンス(質問13) を取り扱っていきたい。なお,文中の意見にわたる部分は私見によるものである。
2.減損テストの有効性
IASBは,一部の利害関係者から,IAS第36号「資産の減損」に準拠した減損テストはのれんの減損を適時に認識していない(Too Little Too Lateの問題)と聞いている。その理由として,①将来キャッシュ・フローの予測における経営者の過度の楽観性と,②ヘッドルーム(=回収可能価額が帳簿価額を超過する額)によってのれんが減損からシールディングされて(覆い隠されて)いること,の2点をIASBは識別した。
ヘッドルームは,自己創設のれん,未認識の資産・負債,及び認識している資産・負債の帳簿価額と回収可能価額との間の未認識の差額で...
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