KAMの本適用に関する座談会を終えて

  町田 祥弘

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「KAMの本適用に関する座談会」は,本誌 3518号(2021年8月16日) から本号までの4回にわたって連載してきた。昨年の「KAMの早期適用に関する座談会」に続くものともいえる。今般の座談会では,監査役等,監査人,利用者,および規制当局・学界の順で,KAMの決定から利用,適用後レビューのプロセスを追うようにしてお話を伺ってきた。

第1回の監査役等の座談会では,岡田譲治氏(日本監査役協会最高顧問)も尾上正二氏(じげん常勤社外監査役)も,KAMの候補を監査役の側からも独自に提案したと述べられていた。KAMは監査人が最終的に監査報告書に記載するにしても,その決定プロセスでは監査役等が最初の,かつ,その後も一貫してコミュニケーションの相手先である。さらに現実のKAMの決定プロセスにおいては,監査役等がヨリ大きな役割を果たしている。

KAMは,監査役等とのコミュニケーションを通じてガバナンスの有効性を高める効果も期待されている。その点について,座談会の最後に,岡田氏が,監査役等は「ガバナンスに責任を有する者」(those charged with governance)であるとして,「私は,監査役と...