新春特別寄稿 上場制度を巡る2022年の回顧と2023年の展望

東京証券取引所 上場部長 菊池 教之

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1.はじめに

株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)の運営する金融商品市場の役割は、多数の投資者の多様な資産運用ニーズと、上場会社の機動的な資金調達ニーズを適切かつ効率的に結びつけることによって、わが国経済の発展に貢献することにある。

この役割を適切に発揮するため、東証では、2022年中においても市場の公正性と健全性に対する信頼確保や、利便性、効率性及び透明性の高い市場基盤の構築に向けた各種の取組みに努めてきたところである。

本稿では、2022年中に実施した東証の上場制度上の取組みを振り返るとともに、本年以降の展望についても可能な範囲で言及していくこととしたい。

2.上場会社の動向

(1)IPO(新規株式公開)の動向

2022年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によりIPOのタイミングを見極めていた多くの企業が新規上場を果たした前年(2021年)の反動もあり、国内におけるIPO件数は111社と前年の136社からは減少した。

市場別にみると、高い成長可能性を有する企業向けの市場である「マザーズ」及び「グロース市場」へのIPO件数が70社となり、引き続き、情報・通信業やサービス業などの...