<INTERVIEW>「監査法人のガバナンス・コード」改訂の方向性 青山学院大学名誉教授・大原大学院大学教授 八田 進二氏
「監査法人のガバナンス・コード」が改訂されることになった。中小監査法人が上場企業等の監査を受嘱するケースが増加しているため、従来の大手法人を念頭に置いた内容を改める。中小法人も自身の規模を踏まえた規律付けが求められるだろう。
コード改訂にあたっては、金融庁内の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」において、2022年内に3度にわたり議論されてきた。本誌は、同検討会の座長を務めた八田進二・青山学院大学名誉教授にインタビューを実施。コード改訂の背景やポイントのほか、これからの課題について、八田教授が考える自主規制発展のための一案を交えて聞いた。
1.有識者検討会再開までの経緯
①2015年の在り方懇でコード策定を提言
監査の在り方を巡る議論のそもそものきっかけは、東芝問題を受けて2015年に設置された「会計監査の在り方に関する懇談会」です。日本の会計監査の根本的な問題点を摘出することを目的に立ち上げられました。東芝問題で浮き彫りになったのは、大手監査法人の品質管理体制が有効に機能していなかった事実です。上場企業の監査を行うならば、監査法人も実効的なガバナンスを確立するための仕組みが必要ではないか、外部からの「第三者の眼」を入れて監査品質をチェックしてもらうべきではないか、といった指摘が聞かれました。そのための規律付けとして提言されたのが「監査法人の組織的な運営に関する原則」、通称「監査法人のガバナンス・コード」の導入です。上場企業の「コーポレートガバナンス・コード」と同様にソフトローによるベストプラクティスを定め、大手監査法人を念頭に自律的・実効的な対応を求める方向になりました。これは在り方懇談会の提言(2016年3月)として盛り込まれました。
ただ、会計不正はどの時代でも起こります。21世紀に入ってもエンロン事件やワールドコム事件が起こりました。そのたびに「不正を見抜けない会計士の目は節穴であり、現在の制度を見直すべき」との声が出ていました。しかし、不正を犯すのは企業であり、企業自らが未然に防止する必要があります。会計監査自体、基本的に企業の不正を見抜くものではありません。もちろん監査手続きの中で不正を発見した場合は適切な指摘・指導を行うことになりますが、財務諸表の信頼性を担保することが一義的な監査人の役割のはずです。ただ、そうは...
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