新・経理実務最前線!Q&A 監査の現場から 第12回 金利上昇局面における会計処理に係る実務上の留意点

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 佐藤 範和

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わが国では異次元の金融緩和の継続により、今も低金利の状況が続いているものの、2023年4月に日本銀行の総裁が植田和男氏に交代になったことを契機に、利上げの有無について予想が飛び交っています。金利上昇が経済に与える影響は様々ですが、これは会計面においても同様であり、場合によっては財務諸表に重要なインパクトを及ぼしかねません。米国におけるシリコンバレー銀行の破綻も、金利上昇を契機とした米国債価格の下落が背景にあったともいわれるなか、企業はこの金利上昇が会計処理に与える影響を想定しつつ、これに備える必要があると考えられます。

そこで今回は、金利上昇局面における主な会計上の論点について取り上げ、どのような影響が想定されるか考察します。

なお、本稿中の意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことを予め申し上げます。

Q1

シリコンバレー銀行の破綻は、保有する米国債の価格が利上げに伴い下落したことがきっかけになったという話もありますが、金利の上昇が有価証券の評価に与え得る会計上の影響について教えてください。

A1

まず前提として、有価証券の保有目的別の評価方法は...