会計不正への対応 その2 海外子会社不正への対処法

 公認会計士・公認不正検査士 安福 健也

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今回は製造業を営む会社(部品メーカー)について、海外の複数の子会社で、同時期に相次いで発生した会計不正の事例を取り上げる。

国内の人口減少に歯止めがかからず、海外に活動領域を求める動きが活発化して久しい。営業領域の拡大とともに管理体制の有効な整備・運用は、健全な事業活動推進(前進)のための車の両輪であり、我が国企業の継続的課題である。

今回の事例でも、東京証券取引所に提出された「改善報告書」や「改善状況報告書」に記載の、会計不正発覚後の内部統制の具体的な改善に向けた取組みの中に、会計不正の事前防止・早期発見のための重要なヒントを見つけることができる。

なお、本稿は取り上げた会計不正の網羅的・総花的な事例紹介ではなく、筆者が重要と認識した事項を抜粋して要約する形をとるものであり、文中に記載の考えなどについては筆者個人の見解である点、ご了知願いたい。

1.事例

(1)事例要約

今回の会計不正は①海外子会社A社の経理担当者による現金着服(不正送金)のほか、②海外子会社B社の海外会計システムの理解不足による仕掛品の過大計上、③海外子会社C社では、実地棚卸の結果を帳簿に反映しなかったことにより棚卸資産の過大...