Q&Aコーナー 気になる論点(350) 株主の観点からの会計処理(2)

‐パーシャルスピンオフに関する公開草案‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 事業を分離・独立させる手段であるスピンオフの実施会社に一部の持分を残す場合(パーシャルスピンオフ)の会計処理について、企業会計基準委員会(ASBJ)が2023年10月6日に公表した企業会計基準適用指針公開草案第80号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」(適用指針公開草案第80号)では、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し、子会社株式に該当しなくなった場合に、配当財産の適正な帳簿価額をもって剰余金(その他資本剰余金又はその他利益剰余金)を減額することを提案しています。これは、株主の観点からの会計処理を提案しているのでしょうか。

適用指針公開草案第80号では、パーシャルスピンオフは、既存の株主以外の第三者が取引に参加していないことから、総体としての株主にとっては、株式配当の実施会社を通じて保有していた完全子会社を自ら直接保有することとなる組織再編であり、当該完全子会社に対する投資が継続しているため、共通支配下における取引に類似した状況と考えられるとしています。このため、株主の観点からの会計処理を提案しているように窺えま...