Q&Aコーナー 気になる論点(354) 資本の特徴を有する金融商品(3)

‐条件付決済条項のある金融商品‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)が2023年11月29日に公表した公開草案(ED)「資本の特徴を有する金融商品(FICE)―IAS第32号、IFRS第7号、IAS第1号の改正案」(改正案)では、条件付決済条項のある金融商品を、金融負債とすることを提案しているのでしょうか。

改正案では、条件付決済条項のある金融商品は、負債部分と資本部分を含む複合金融商品であり得ることを提案しています。

〈解説〉

背景

2008年の世界的な金融危機において、公的資金を注入した金融機関を救済するベイルアウトが批判され、その後の自己資本比率規制であるバーゼルⅢでは、自己資本の質を強化し、一定の場合に株主・債権者に損失を負担させることにより、納税者負担を回避するベイルインが図られています。

具体的には、[図表1]から構成される自己資本について、リスクアセットに対する一定の比率が要求され、また、国際的に活動する銀行が発行し、その他Tier1やTier 2に算入される金融商品は、トリガー事由が発生した場合に、元本削減又は普通株式への転換が行われる実質破綻時損失吸収条項(PONV)を含む形で損失吸収力①があることが必要とさ...