会計不正への対応 その5 会社の財産と社長の財産
公認会計士・公認不正検査士 安福 健也
1.はじめに
第5回では、システム関連サービス業を営む上場会社P社における会計不正のうち、売上高の前倒し計上および関連会社に対する売上債権の貸倒引当金の計上不足の事例を取り上げる。上場維持の一環として、創業社長A氏が中心となり、収益の過大計上、費用の過少計上が企図されたものであるが、その手口および再発防止策をみながら、上場企業が果たすべき使命、期待される役割について再確認したい。
なお、本稿は、取り上げた会計不正の網羅的・総花的な事例紹介ではなく、筆者が重要と認識した事項を抜粋して要約する形をとるものであり、文中に記載の考えなどについては筆者個人の見解である点、ご留意願いたい。
2.事例
①売上高の前倒し計上
P社は、得意先Q社との間で、従来、人材派遣契約を締結し人材派遣業務を数年継続していたが、期末月の前月に、翌期の人材派遣契約の締結は更新せず、その一方で、Q社と新たにコンサルティング業務契約を締結した。これに伴い、従来、人材派遣契約に基づき、月次で売上計上を行っていたが、コンサルティング業務契約締結後においては、期末月の前月に開催したイベントの実績をもって、人材派遣業務の年間報...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします