「資本コストや株価を意識した経営の推進」に関する現状と取組みについて
東京証券取引所 上場部企画グループ統括課長 池田 直隆
1.はじめに
東証は、昨年3月に、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営」の推進に関するお願いを行った。このお願いは、2022年4月に行った市場区分見直しが、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上、ひいてはそれによる国内外の幅広い投資者にとっての日本市場の魅力向上を目指す中で、その実効性向上のための一丁目一番地の施策として実施しているものである。
もっとも、一例ではあるが、日本市場のPBR(株価純資産倍率)とROE(自己資本利益率)を国際比較すると、検討当時のデータで、プライム市場上場会社の約半数がPBR1倍割れ、ROE8%未満という状態にあり、それが欧米などと比較すると、ファクトとして低い水準にある。2015年に策定したコーポレートガバナンス・コードにおいて、資本コストに関する原則が導入され、90%以上のプライム市場上場会社がこれをコンプライする中で、これを実質的なものとしていくことが重要との指摘を踏まえ、今回のお願いに至っている。
これまで、各所において要請の背景や内容については多く解説を行っているため、それらについては以下で簡単に...
- 経営財務データベースで続きを読む
-
無料 2週間のお試しはこちら
すぐに使えるIDをメールでお送りします