[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第12回「四半期開示の見直し」

金融庁 企画市場局 企業開示課長 野崎 彰
青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘

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Ⅰ.ここが訊きたい

2024年4月から四半期開示制度が改正され、第1四半期(1Q)及び第3四半期(3Q)については、法定四半期報告が廃止され、証券取引所における四半期決算短信に「一本化」される。また、第2四半期(2Q)については、四半期決算短信とともに、法定四半期報告に代えて法定の「半期報告」が行われる。

一方、1Q及び3Qの決算短信に付される財務諸表については、監査人によるレビューは任意とされ、また自主的にレビューを受ける場合でも、従来の「適正でないと認められる事項は見当たらなかった」とする適正性レビューだけでなく、「会計基準に準拠していないと認められる事項は見当たらなかった」とする準拠性レビューを受ける選択肢も設けられた。

こうした四半期開示制度に関する大幅な見直しは、2021年から2022年にかけて開催された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)において実施され、法改正に至ったものである。DWGにおける議論は、当初、四半期開示が近視眼的経営(Short Termism)に陥るとの指摘から開始されたが、学術的にはそうした指摘を支持する証拠は必ずしも示されていないことが報告されると、議論の焦点は、企業の経理・財務部門や監査法人における業務負荷の軽減に移っていったように見受けられる。

四半期開示の「一本化」が方針として定まった後、最終的には、政府の強い方針の下、「法定四半期の廃止」がDWG報告「中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて」(2022年6月13日)に盛り込まれたのである。

四半期開示制度は、アメリカでは、1930年代に年次報告制度が法定化されて以来、続けられてきており、わが国においても、法制度としては2008年度から15年にわたって実施されてきたものである。

四半期開示制度については、欧州では、廃止して期中報告を半期報告に限定する動向があり、わが国の今般の制度改正もそれと軌を一にするものであるといえるが、一方でアメリカでは、当時のトランプ政権による四半期報告の廃止の方針にもかかわらず、証券取引委員会(SEC)は同制度を維持し続けている。今回の四半期開示の見直しは、企業内容開示制度の充実を図ってきたわが国の開示制度において、情報開示(少なくともそのチャネル)の削減・効率化を図るという意味で大きな政策変更とも解される。

四半期開示の見直し...