企業に影響をあたえる、金融機関の排出量開示

―あなたの排出量は誰かのスコープ3―

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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日本の排出量の開示

2月19日、「排出量の開示、東証プライム企業に義務付けを金融庁が検討する」ことが日本経済新聞により報じられ、日本の排出量開示はまだ先なのかと改めて気がついた。これは同日に開催された金融審議会総会で審議されたもので、2025年以降の金商法改正を目指す、つまり昨年有価証券報告書にサステナビリティ開示のセクションを追加し、3月末に日本版サステナビリティ開示基準の公開草案が発表されてもなお、排出量の開示の義務付けには金商法の改正が必要だった、ということか。EU、米国、そしてアジア各国と世界中で排出量の開示に向けた取り組みが行われている中、日本ではもう少しプロセスを経なければならないようだ。また、プライム企業に排出量の開示を義務付けると聞くと、前進のように感じられるが、日本版サステナビリティ開示基準の適用範囲をプライム企業だけにするという案だ。さらにプライム市場に上場する企業すべてにするか、その一部にするかという議論も行われており、これは他国に比べると控えめな対応のようで気になる。プライム市場に上場していなくても、日本で上場企業になるということは世界的に見ればけっして"排出量の...