Special Interview 中村直人弁護士に聞く 令和6年株主総会の留意点

 弁護士 中村 直人

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◆アフターコロナの株主総会において留意すべきことを教えて下さい。

本年の株主総会は、新型コロナウイルス感染症の影響をほぼ受けないアフターコロナの株主総会となります。本年の株主総会の対応にあたっては、昨年以降の傾向を踏まえた準備に加えて、コロナ禍の株主総会で進んだ実務上の取組みを、コロナ禍前の実務に戻すのか、コロナ禍の実務を継続し、それを発展させるのかについて、各社の描く新しいアフターコロナの株主総会像を踏まえて、具体的に検討しておく必要があります。

まず、来場者数の増加傾向を踏まえた座席数の確保や第二会場の設置です。来場者数は増加傾向にあり、本年の3月総会では、昨年の1.1倍~1.2倍程度の来場者数があったようです。合理的な推測に基づき準備した会場のキャパシティを超える株主が来場した場合で、その全員を出席させる代替策がないときには、一部の株主の出席を断ったとしても直ちに決議の方法が法令に違反するとか、著しく不公正であるとされて、決議が取り消されるわけではありませんが、来場者数の増加を前提として、十分な座席数を確保し、必要に応じて、第二会場の設置も検討しておく必要があります。

次に、感染予防を理由として、来場を控えて欲しい旨を招集通知に記載する、来場者数を制限する、マスク着用を入場の条件とする、質疑応答の時間を極端に制限するなど、感染予防を理由として、株主の権利を制限する総会運営は終わりにする必要があります。過渡期であった昨年の株主総会でも少なくなっています。また、役員が会場に出席せずリモート参加とするというのも正当化することは難しくなっています。

コロナ禍では、たとえば、コーポレートサイトでの事前の情報提供の拡充や、事前質問の受付けと総会での一括回答など、株主総会へのリアル参加以外のチャネルでの株主に対する情報開示やコミュニケーションの手段が拡充されることとなりました。これらは、株主の利益に資するものですので、継続すべきです。

シナリオについては、コロナ禍における短縮版のシナリオからコロナ禍以前のシナリオに戻す会社が増えています。ただし、コロナ禍における短縮版のシナリオは、株主総会の時間を短縮するために、形式的なシナリオ部分を削り、実質的な内容に絞り込んだものです。そのため、より株主総会の実質化を図るという観点からは、形式的なシナリオ部分、たとえば、出席株主数・議決権数の報告...