[連載対談]キーパーソンに訊く重要テーマ 第13回「内部監査機能の拡充」
一般社団法人 日本内部監査協会 代表理事 土屋 一喜
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 教授 町田 祥弘
Ⅰ.ここが訊きたい
内部監査人協会(The Institute of Internal Auditors, Inc.:Global IIA)は国際組織であり、日本内部監査協会も英文名称はIIA-Japanと称している。公認内部監査人(Certified Internal Auditor:CIAR)の資格は国際資格であり、公認会計士や弁護士の資格とは異なって、国際的に共通して通じる資格となっている。
一方、日本の内部監査部門は、企業内の人事ローテーションの対象となっており、必ずしも海外のように専門職業人からなる組織ではない。日本内部監査協会も会社加盟が圧倒的に多いのが実情である。またわが国の内部監査部門は、上場審査に当たっては設置が求められているものの、必ずしも法制度で継続的な設置が義務付けられているわけではない。
こうした固有の環境を背景としながらも、近年、わが国において内部監査の役割が大きく拡充しつつある。
1つには、ガバナンスにおける内部監査の重要性の認識である。コーポレートガバナンス・コードでは、「取締役会はグループ全体を含めた全社的なリスク管理体制の整備が求められ、内部監査部門を活用しながら、その運用状況を活用すべきである」(補充原則4-3④)とされ、これを受けて、有価証券報告書においても、「内部監査の実効性を確保するための取組」について記載することが求められるようになった。
また、監査役等の側からも、日本監査役協会から2017年に「監査役等と内部監査部門との連携について」が公表され、監査役等の機能の向上の観点から、内部監査部門を監査役等の下部組織として位置づけることを含む「連携」の提言が行われるなどしている。これも内部監査機能をガバナンスに役立てようという観点に立つものといえよう。内部監査の側からも、経営執行だけでなくガバナンス機関である監査役等に対するダブル・レポーティング・ラインの確保の重要性が指摘されている。
ところで、本年(2024年)1月には、グローバル組織であるIIAが内部監査基準を7年ぶりに改訂した。中でも注目されるのは、初めて「内部監査基準」(Internal Audit Standards)という名称が付されたことである。企業のガバナンスや財務報告の中で一層その役割を増す内部監査について、公共の利益(public interest)の観点から遵守すべ...
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