Q&Aコーナー 気になる論点(363) IFRS第18号「財務諸表の表示及び開示」(1)

‐損益計算書の区分‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は、IAS第1号「財務諸表の表示」を置き換えるように、2024年4月9日にIFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」を公表しています。IFRS第18号では、損益計算書を区分して営業利益を表示することとしていますが、営業の区分を直接、定義しているのでしょうか。

いいえ。IFRS第18号は、損益計算書に含まれるすべての収益・費用のうち、「投資」「財務」「法人税等」「非継続事業」の区分に分類されないものを「営業」に区分することとし、直接、定義することとはしていません。

〈解説〉

IFRS第18号(1)‐公表の経緯

IFRS第18号は、財務業績報告の改善を求める関係者、特に財務諸表利用者からの強い要望に応えて開発されました(BC2項)。

IASBが2019年12月に公表した公開草案(ED)「全般的な表示及び開示」の提案は、以下に関連していたものでした(BC5項)。

(1)損益計算書の小計

(2)経営者が定義した業績指標(MPM)

(3)基本財務諸表と注記の役割、集約と分解

ほとんどの関係者は、公開草案の提案に概ね同意しており、財務諸表利用者は、プロジェクトの目的と具体...