不正を見抜くデータ監査 第3回 残高トレースを見逃すな
公認会計士 坂井 俊介
1.複式簿記の特徴
第1回( 本誌No.3664 )、第2回( 本誌No.3667 )と売上計上に絡む不正会計について見てきたが、今回は売掛金からアプローチする。
一般企業では複式簿記が採用されており、売上高を計上する場合、通常、以下のような仕訳が立つ。
仕入の場合は買掛金、経費の場合は未払金や未払費用が相手科目になる。もし、売上高が架空であれば、当然、売掛金も架空であるが、売掛金残高を消すためには、入金処理するか値引きや貸倒れなどの損失処理をする必要がある。売掛金が長期滞留していれば、そもそも架空計上のものだったか、クレーム等で回収不能のものである可能性がある。
売掛金の実在性、回収可能性を検証するため、得意先に対して売掛金の残高確認を実施するのが一般的であるが、今回はデータ分析により異常な売掛金残高を抽出する手法を紹介する。
2.売掛金理論値との照合
得意先元帳の売掛金残高と売上データから算出した売掛金理論値とを比較することは、不正発見の一つの有力な手掛かりとなる。
販売システム上で売上計上すると、通常は得意先ごとに決済条件マスターに基づいて、自動的に売掛金決済日及び受取手形(電子決済債権含む。)決済日...
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