四半期決算短信に対する任意レビューの検証
法政大学 教授 中野 貴之
専修大学 准教授 金 鐘勲
専修大学 教授 成岡 浩一
1.はじめに
2024年4月1日以降に開始する四半期会計期間を含む四半期累計期間(第2四半期累計期間を除く。)に係る決算より、金融商品取引法に基づく四半期報告書は廃止され、取引所の規制に基づく四半期決算短信に一本化されている。これに伴い、四半期財務諸表に対する公認会計士等によるレビューは任意化されている。本稿は、同任意レビューを受けることを自発的に選択した企業は、そうでない企業と比較して、どのような特性を有しているのかという研究主題を、現代の会計学研究における標準的手法を用いて解明する。
任意レビューの有・無の決定要因については、すでに東京証券取引所(2024)および週刊経営財務(2024a)が「大規模企業ほど任意レビューを自発的に受けている」ことを裏づける証拠を報告済である。本研究では、同制度改定後初となる1,871社の四半期決算短信を対象に慎重に検証した結果、当該事実に加えて、新たに3点の証拠を見い出すに至った。
すなわち、第一に企業ガバナンスが脆弱と見られる企業ほど任意レビューを受けていないこと、第二に準大手監査法人・中小規模監査事務所の被監査会社は、大手監査法人と比較して、任意レビュ...
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