特別寄稿 上場制度を巡る2024年の回顧と2025年の展望

東京証券取引所 上場部長 渡邉 浩司

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1.はじめに

株式会社東京証券取引所(以下「東証」という)は、上場会社の中長期的な企業価値向上、それを通じた国内外の幅広い投資家にとっての我が国証券市場の魅力向上に向けて、様々な取組みを進めている。

本稿では、2024年中における上場制度上の取組みを振り返るとともに、今後の展望についても可能な範囲で言及することとしたい。

2.資本コストや株価を意識した経営の推進

東証は、2023年3月に、プライム市場、スタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けて、自社の資本コストや資本収益性等の現状分析、改善に向けた計画の策定・開示等の対応を要請した。

要請から2年弱が経過し、2024年12月末時点の改善に向けた計画の開示率は、対応を検討中の企業も含め、プライム市場では90%、スタンダード市場では48%となっており、集計を開始した2023年12月末時点からの比較では、プライム市場で40ポイント、スタンダード市場で29ポイント増加した。企業の開示状況が進展する中で、国内外の機関投資家からも、引き続き、企業の今後の変化に期待と関心が寄せられている。

一方で、機関投資家からは、...