不正を見抜くデータ監査 第7回 見破りづらい原価付替…工事請負
公認会計士 坂井 俊介
( 29頁)
1.工事請負の会計処理
工事請負は、主として建設業で一般的に見られる契約形態である。仕様書で工期と品質基準が定められ、工事が完了し、成果物を引き渡した時点で、注文主に対する売上代金の請求額が確定する。工事管理や資材調達などは、請負会社の裁量に委ねられている。システム開発や製造請負、清掃、警備などのサービス業務請負の会社でも、同様の契約形態が広く見られるが、本稿では建設業を中心に考察していく。
工事請負の収益認識の会計処理は、原則として、工事の進捗に伴い一定の期間にわたり履行義務が充足されると判断できるため、(イ)工事進捗度に基づき収益を認識する方法(従前、工事進行基準とされてきた方法)が採用されている。少額または期間がごく短い工事については、簡便的に(ロ)工事完了時に収益を認識する方法(従前、工事完成基準とされてきた方法)が採用されている。
なお、工事進捗度を合理的に見積もれない場合は、(ハ)回収可能な原価発生額により収益を認識する方法(原価回収基準)が採用されている。
上記(イ)の方法は、実務的には従前の工事進行基準を引き継いでおり、工事売上高の計上は次の算式により行われる。
工事売上高 = ...
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