不正を見抜くデータ監査 第8回 少額反復型の不正が多い小売業

 公認会計士 坂井 俊介

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1.小売業の特徴

小売業は、一般消費者向け衣服や食品、住宅資材、日用雑貨など、様々な物品の販売を行う業種である。多店舗展開している会社が多く、店舗での少額反復型の不正が跡を絶たない。多くの場合、現金や商品の着服を伴う。1件当たりの金額が小さいため、数年にわたり発覚しないケースが多い。Eコマースの発展により不正手法も変わりつつある。

小売業において会計不正が起こる場所および主な手口は、次のとおりである。

(1)本社

▶仕入割戻…商品仕入は本社で一括して行っている場合が多く、仕入先ごとに多額の仕入割戻が発生する。この仕入割戻の未収計上の金額を調整する。

▶ハンド仕訳…一般的な経理不正として、POSシステムなどの基幹業務システムのアウトプットとは異なる売上、仕入、在庫の金額を計上して粉飾決算を行う。

(2)店舗

▶経費の架空・水増し計上、着服、キックバック…取引先と結託して、あるいは取引先からの請求書を改ざんして、経費を架空・水増し計上する。偽装口座を作って本社からの支払額を着服したり、取引先からキャッシュバックを受けたりする。

▶在庫の横流し…店舗在庫を盗んで、横流し販売する。

▶在庫の架空・水増し計上、損...