Q&Aコーナー 気になる論点(383) 電力購入契約(PPA)の会計処理(2)

‐IFRS第9号のヘッジ会計‐

早稲田大学 大学院会計研究科 教授 秋葉 賢一

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 国際会計基準審議会(IASB)は、2024年12月18日に、「自然依存電力を参照する契約:IFRS第9号及びIFRS第7号の改正」を公表しました。この改正によって、自然依存電力を参照する購入の予定取引をヘッジ対象とする場合、オーバーヘッジ部分も損益認識しないことができるのでしょうか。

いいえ。改正IFRS第9号でも、予定取引をヘッジ対象とするキャッシュフロー(CF)ヘッジにおいて、ヘッジ手段の自然依存電力を参照する契約の対象となる電力量がヘッジ対象の購入量を上回り、ヘッジ手段の公正価値(FV)の変動がヘッジ対象の価値の変動を上回るというオーバーヘッジの場合、その上回る部分を非有効部分として損益に認識することになります。

〈解説〉

改正IFRS第9号(1)‐問題の所在

改正IFRS第9号において、IASBは、自然依存電力を参照する契約がヘッジ手段に指定された場合、IFRS第9号のヘッジ会計の要件を企業がどのように適用するかを明らかにするよう要請されたとしています(BC6.661項)。

2024年5月公表の公開草案「再生可能電力に係る契約」では、企業が当該契約によって電力価格を固定することが多...