会計基準の長い日々 第5回 代行部分は国の制度である~JICPA退職給付実務指針

 公認会計士 西川 郁生

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会計ビッグバンへの対応

1998年春、3年に一度のJICPAの会長選挙が行われた。当時は理事選とともに会長選も会員による直接選挙 であった。この年は、監査法人トーマツ現職・元職の3人が競う異例の選挙となった。トーマツ現職の有力候補を抑えて三度目の挑戦をした中地 宏氏が当選した。中地会長は会計人東大会 の会長でもあり、同窓の大先輩にあたる。私は三度目の理事任期を迎えた。理事のうち常務理事となる予定者をどの役職に就けるかは新会長が決定する。このため予定者は希望の役職(担当)を新会長に提出する。前の任期で国際担当常務理事だった私は、会計制度担当を希望すると書き込んで提出した。

当時、日本の会計基準は大蔵省(98年に大蔵省分割により金融監督庁、さらに改組により2000年から金融庁)の諮問機関である企業会計審議会が策定していた。審議会の会計基準は大きな骨組みを示すものである。具体的な指針の策定に関しては、会計基準に指示する文言がある。それの引用は略するが、簡単に言えば「JICPAが実務指針を作成・公表する」というものである。

実務指針はJICPAにおいて理事会の決議を経て公表される。だがJICPAの理...