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最近のニュース・トピックを通して学ぶ 租税条約の理論と実際〈10〉租税条約と事業体課税

国際課税研究所 首席研究員 矢内 一好

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1 問題の所在

平成15年11月に署名された現行の第3次日米租税条約(以下「第3次条約」とします。)は,それまで日本の締結した租税条約にはないいくつかの特徴となる条項を含んでいますが,そのひとつが,第3次条約第4条(居住者条項)第6項における両締約国において課税上の取扱いが異なる事業体であるハイブリット・エンティティ(Hybrid Entities:以下「HE」とします。)の課税関係に係る規定です。日本においても平成17年8月1日施行の有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合(LLP)等のような新しい事業体の形態が出現したことから,第3次条約における第4条第6項の意義の検討を行う...