米国の税務調査 (その4) 行政召喚状(サモンズ)
大原大学院大学 客員教授 川田 剛
これまで3回にわたり米国の税務調査の概要についてみてきた。
米国でも,通常の調査は,日本の場合と同じく任意調査の形で行われている。
しかし,わが国の場合と異なり,米国では,当局の調査や出頭要請,資料提出要求等に応じない場合,その履行を強制する「行政サモンズ(Administrative Summons)」という強力な手段が与えられている(行政召喚状との訳もあるが,以下では単にサモンズという。)。
そこで今回は,「行政サモンズ」の概要について紹介する。
1 行政サモンズとは?
内国歳入庁(Internal Revenue Service.以下単にIRSという。)は,内国歳入法(Internal Revenue Code.以下単にIRCという。)の適正な執行を確保するため,同法第7602条において,帳簿書類の調査,本人及び取引先等に対し証言を求める権利等広範な権限を付与されている (注1) 。
(注1)例えば,Watson Billman“Federal Tax Practice and Procedure”Thomson West, p1146
ちなみに,IRC 第6001条では,納税者は,所得,控除及び...