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法人税調査等を踏まえたCRS情報の動向

東京富士大学 客員教授 税理士 伴 忠彦

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1.はじめに 一人は皆のために

「CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)に基づく金融口座情報の自動的情報交換」という国際的な税務当局間の情報交換を日本が開始して,3年になります。これは,制度に参加する100を超える国・地域が,「私の国にはあなたの国の居住者が保有する,このような金融口座がある」と,その口座保有者の居住地国に教える仕組みです。互いに教え合う結果,参加国の税務当局は,自国居住者が他の参加国の金融機関に保有している口座の情報を 悉 皆 的しっ かい てき に入手することができるという,極めて画期的な情報交換になっています。以下,この仕組みを「CRS制度」,それに基づいて各国が交換する金融口座情報を「CRS情報」といいます。

CRS制度は,個人ばかりではなく,法人が海外に保有する金融口座も対象にしており,国税庁が外国から受領するCRS情報は,個人・法人・相続などの税目を問わず,申告内容の審査や税務調査で活用できる,非常に汎用性の高い情報になっています。

年1回,過去3回の情報交換を経て,国税庁は累積で約5百万件という大量の外国金融口座情報を外国税務当局...