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デジタル課税に関する米国提案のポイントと企業への影響

長島・大野・常松法律事務所 弁護士 南 繁樹

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1.Game Changerとしての米国提案―「底辺への競争」の終わりの始まり?

2021年4月8日,米国バイデン政権は,OECDのInclusive Framework(139か国)の運営グループに対し,“Presentation by the United States” としてデジタル課税およびミニマム・タックスに関する米国からの提案(以下「米国提案」という。)を提示した 。これまでOECDは,Pillar 1として,恒久的施設がない市場国に課税権を与え,多国籍企業からの税収を市場国に配分することを提案していたところ(Amount A),米国提案は,税収配分の対象となる多国籍企業を「売上高」と「利益率」で限定することで制度を簡素化し,適用範囲を全世界で100社以下に大幅に縮小することを提唱しており,OECD案に対して向けられてきた批判に応えている。

他方で,ミニマム・タックスに関し,米国提案は米国国内法による親会社(株主)レベルでの合算課税の税率を10.5%から21%まで引き上げるとともに国別判定とすることで実効性を高め,他方で,利息・使用料等の税源浸食的支払の抑制策を受領国の税率(...