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[全文公開] domestic news OECD 経済のデジタル化に対応する第1・第2の柱の大枠に132ヶ国・地域が参加,G20で承認

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OECDは7月1日に,経済のデジタル化の進展に伴う課税上の課題への対応策として議論が行われている第1の柱(IT企業を含む巨大多国籍企業への課税権・利益の再配分),第2の柱(グローバル・ミニマム課税)について,2つの柱の大枠内容と,この新制度に130以上の国・地域が参加することを示した声明(Statement on a Two-Pillar Solution to Address the Tax Challenges Arising From the Digitalisation of the Economy)を公表した。同内容は7月9日~10日にイタリアで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議でも承認されている(なお,BEPS包摂的枠組の加盟国・地域は139に上るが,7月21日時点の参加国・地域は132であり,いくつかの国は現時点では同声明には参加していない。)

今回の声明において2つの柱の制度の大枠内容が示されたが,今後,積み残しとなっている論点や詳細な実施計画などについて交渉が続けられ,本年の10月に予定されている最終合意に向けて議論が進められていくことになる。

第1の柱は「売上高200億ユーロ超,利益率10%超」の企業が対象

第1の柱(pillar 1)は,IT企業を含む巨大多国籍企業への課税権の一部を,企業の物理的な所在に関わらず,その企業が実際に事業を行い利益を得た市場がある国へ再配分する新制度となる。

本年に米国から提案があった内容も踏まえて議論が行われてきた第1の柱の適用範囲については,「世界の売上高が200億ユーロを超え,利益率が10%を超える多国籍企業」が対象となった(同声明Pillar One「Scope」)。また,対象となる企業では,収益の10%を超える残余利益のうち,その20~30%がネクサスのある市場国に配分されるとしている(Pillar One「Quantum」)。

なお,上記の世界売上高の閾値は,Amount A(上記の利益の市場国への再配分など)に係る税の安定性も含めた制度の実施が成功することを条件として,将来的に「世界の売上高が100億ユーロ超」に引き下げる考えも示されており,これに関連するレビューを制度発効から7年後に行うとしている。

なお,第1の柱のAmount Aの実施については,租税条約などを対応させるための多国間文書を2022年に開発し,2023年に発効する考えが示されている(Pillar One「Implementation」)。

ただし,昨年10月に公表されたデジタル対応課税に係るブループリントなどでも考えが示されているAmount B(国内の基本的な販売・流通活動に係る独立企業原則に則った一定の利益)については,簡素化や合理化などについて検討作業を行い,2022年末までに検討を完了する予定としている(Pillar One「Amount B」)。

第2の柱はCbCRと同様に「7億5000万ユーロ」以上が対象範囲の閾値に

第2の柱(pillar 2)は,各国が世界共通の最低法人税率を導入することで,法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけることなどを目的とした新制度であり,各国の国内規則となる「IIR(Income Inclusion Rule―構成事業体の軽課税所得に関して親会社に課税)」,「UTPR(Undertaxed Payment Rule―(IIRの課税対象でない場合に)軽課税国への支払について損金算入否認など)」や,租税条約に関連した規則である「STTR(Subject to Tax Rule)」で構成されるとしている(Pillar Two「Overall design」)。

なお,今回の声明では,IIRとUTPRで使用される最低税率は「少なくとも15%」になることが明示された(Pillar Two「Minimum rate」)。

また,第2の柱が適用される範囲については,BEPS行動計画13の国別報告(CbCR)の閾値と同様に,年間の連結総収入金額が「7億5000万ユーロ」以上の多国籍企業が対象になることが示された(Pillar Two「Scope」)。

なお,第2の柱の実施については,2022年に法制化を行い,2023年に発効する考えが示されている(Pillar Two「Implementation」)。

※同声明全体の詳細な内容については,今号掲載の「 Worldwide Tax Summary 4ページ 」からの内容などもご参照下さい。また,9月号で解説も掲載する予定です。