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令和3年度税制改正における国際課税関係の改正について

  中西 佑太

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はじめに

経済のデジタル化・グローバル化や取引の多様化・複雑化が進展する中,国際課税制度の重要性はますます高まっています。近年,我が国はBEPSプロジェクトの合意事項等を踏まえ,国際的な課税逃れの防止に向けて累次の制度整備を行ってきたところであり,現在は,経済のデジタル化に伴う国際課税上の課題への対応について,OECDを中心に,引き続き精力的な議論が続けられています。国際課税制度については,経済活動の重要なインフラとして,こうした環境の変化や重要性の高まりを踏まえ,健全な経済活動を支援しつつ,公平な競争条件を確保し,国際的な課税逃れに対しては的確に対応していく観点から,引き続き,必要な見直しを行っていく必要があります。

こうした基本的な考え方の下,令和3年度税制改正においては,主として以下のような見直しを行っています。

第一に,日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ,海外から金融事業者・高度人材を呼び込むことは重要な課題であり,規制・税制面の取組みを行うとされているところ,この一環として,国際課税制度においては,外国組合員に対する課税の特例について,より経済活動の実態に即した課税関係を整備し投資促進につなげる観点から,特例適用に係る持分割合要件の判定方法の見直しが行われました。

第二に,デジタルガバメントの推進や,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う課題への対応を図る観点から,非居住者等が源泉徴収義務者等へ提出するクロスボーダー取引に係る各種申告書・届出書等について,書面による提出に代えて,電子メール等の電磁的方法による提供を行うことができることとされました。

このほか,過大支払利子税制,外国法人の恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入制度等,過少資本税制及び内国法人が外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額の取扱いについて,それぞれ制度趣旨及び経済活動の実態に即してより一層各制度の適正化を図るといった観点からの見直しが講じられています。

これらの改正を含む国際課税の改正は,次の法令により行われています。

(法律)平成32年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法等の一部を改正する法律(令2.12.4法律第68号)所得税法等の一部を改正する法律(令3.3.31法律第11号)(政令)平成32年東京オリン...