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裁判例から学ぶ タックス・ヘイブン対策税制への実務対応上の視点(上)

大江橋法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 河野 良介

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第1 はじめに

平成29年度税制改正により抜本的に改正された我が国のタックス・ヘイブン対策税制のもとでは,外国関係会社が経済活動基準を充足しない場合,対象外国関係会社と位置付けられ(ただし,特定外国関係会社に該当する場合は除く),租税負担割合による適用免除とならない限り,会社単位の合算課税の対象となってしまう。海外子会社の事業実態や管理体制次第では,会社単位の全部合算による巨額課税リスクにさらされる点で,適用除外要件を軸に制度構築されていた平成29年度税制改正前の従前の制度と共通の要素を持っているといえる(適用除外要件及び経済活動基準は,いずれも①事業基準,②実体基準,③管理支配基準,④主たる事業に応じて所在地国基準又は非関連者基準から構成されているところ,平成29年度税制改正において,上記各基準の大枠は変更されていない)。

平成29年度税制改正後のタックス・ヘイブン対策税制は,適用開始後間もないこともあって,現時点では,経済活動基準の充足性が問題となった裁判例は見当たらない。しかしながら,タックス・ヘイブン対策税制に基づく課税は強化される傾向にあることを踏まえれば,税務調査,再調査の請求...