裁判例から学ぶ タックス・ヘイブン対策税制へのポイントと留意点〈中〉
大江橋法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 河野 良介
第1 本号における検討事項の概要
前号 では,タックス・ヘイブン対策税制の適用除外要件に関連する裁判例について,近時の実務に照らして最も重要性が高いと思われるデンソー事件を取り上げつつ,特に事業基準の充足性に光を当てる形で,実務上武器になる視点(考え方)を紹介した。本号でも,引き続き納税者勝訴案件を取り上げるが(納税者敗訴判決の分析は次号に譲る),①レンタルオフィス事件における諸論点,②デンソー事件における事業基準以外の隠れた論点を検討対象とすることを通じて, 前号 で解説できなかった事項をカバーすることにしたい。紙幅の関係上,いずれの事項についても,事案の内容を具体的に紹介することはできず,要点のみを簡潔に解説するスタイルとならざるを得ない点につき,ご容赦いただきたい。
第2 納税者勝訴判決から学ぶべき視点(続)
1 レンタルオフィス事件(実体基準,管理支配基準,立証責任の所在)
管理支配基準の充足性を巡っては,安宅木材事件 1 ,ニコニコ堂事件 2 といったいくつかの裁判例があるものの,これらの事案ではいずれも納税者敗訴となっている。
これに対して,レンタルオフィス事件控訴審判決3においては,立証責任の所...