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7月に合意された「OECDデジタル課税・世界最低税率制度」の概要と日本企業への影響

長島・大野・常松法律事務所 パートナー・弁護士 南 繁樹

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1 デジタル課税の始まりの始まりと,「底辺への競争」の終わりの始まり¹

2021年7月1日,OECDは,国際課税改革のための新しい枠組みを創設する旨の声明(以下「7月合意」という。)を公表し ,包括的枠組(Inclusive Framework。以下「IF」という。)の参加国のうち世界130の国・地域がこれに参加した(その後増えて134か国)。この合意は,国際課税ルールを改定し,多国籍企業がどこで事業を行うかに関わらず税を公平に負担することを確保するための2本の柱からなる。

第1の柱(Pillar 1)は,物理的拠点なく販売を行った場合に消費者の所在地国が課税を行うことを可能にするものであるが,対象となる企業は100社程度と予想されており,大幅に減少した。しかし,将来的には対象企業を拡大することが予定されており,デジタルビジネスに対する本格的な課税の「始まりの始まり」といえる。

第2の柱(Pillar 2)は,世界共通最低税率制度であり,所得の源泉地国における課税の実効税率が15%(最終的な数値は未確定)未満である場合,最終親会社国で最低税率まで合算課税を行うか,源泉地国で損金算入否認又は源...